2046は恋愛物じゃない。ラブシーンをふんだんに織りまぜているけど、ちっともロマンチックじゃない。監督の私的な香港への思い、無くなってしまった物への思いを、ただひたすら綴っている。
で、その試みは、見事に失敗している。その世界にぜんぜん入っていけない。
この映画を香港人以外が観て、何か感じるところはあるだろうか?また、当の香港人自体から拒絶反応を受けているのはどういうことなのだろうか?
「俺と一緒に行かないか?」。キムタクが繰り返すフレーズが耳に残る。過去の物への思いは、日本に行こうがシンガポールに行こうが取り戻せない。過去の物はその時代に永遠に留まる。一緒に連れていくことはできない。自分自身の問題なんだ。
外国人の僕にとっては、文化的にカラッポな事こそ、香港の魅力であり、居心地の良い理由。
多くの香港人が、香港から逃げ出したいと思ってるけど、それは過去への郷愁からではなく、単純に、産まれてから死ぬまで同じところで生活するって発想がないだけに思える。
すべての人が旅人だから、自分が外国人だって感じがしない。
日本に住んでいると、海外で生活するってイレギュラーに思えるけど、僕が知る限り、香港人、フィリピン人、インド人、オーストラリア人、カナダ人にとっては、普通の事だと思う。
ある意味、自分の記憶の中にだけある故郷を探し続ける香港人を可哀想だと思う。しかし、それと同時に、どこへでも旅に行けるフットワークの軽さを羨ましいと思う。