復讐3部作の3作目「親切なクムジャさん」のポスター。
パク・チャヌク作品は人物描写が甘いと言う方、ちょっと待ってください。「復讐者に憐れみを」の主役って誰?「オールド・ボーイ」の主役はオ・テス氏ですか?はっきりしないですよね。
パク・チャヌクは主役など設定しないし、登場人物に過度な感情移入をしない。将棋やチェスのような、キングを追いつめる世界じゃなく(ありがちですね)、登場人物すべてが、奇妙な相似を描いて増殖し、飲み込み、飲み込まれていく。囲碁的世界。碁石(登場人物)間に優劣は存在しない。局面がすべて。誰かに対する復讐じゃなく、自らの罪深き生に復讐される。
物語を二項対立で描こうとしない。それがパク・チャヌクの作風であり、素晴らしいところ。
「復讐者に憐れみを」
話の展開がメチャメチャ早く、ご都合主義。漫画チックで、ドラマとしてのリアリティは薄い。登場人物の心理描写より、事件の積み重ねで話が進んでいく。物語は、登場人物の心理を無視して、とんでもない方向へ。いや、定めの方向へ。
意図と結果は結びつかない。愛する者同士でも、理解し得ない。別れは必然。復讐は繰り返す。人は、気付かぬうちに、他人を傷つけてる。
詰め込み過ぎで、まとまりはないけど、レベルは「オールド・ボーイ」よりはるかに上。ペ・ドゥナちゃんだって、自分が出た映画の中で、この作品が一番気に入ってるんじゃないかな?
現実を冷徹に描いてるだけで、そんなに暗ーくないじゃんと思うのは、俺の性格が暗いからでしょうか?
「オールド・ボーイ」
オ・テス氏が相手に復讐される話?そんなに単純じゃないっすよね?愛する人に出逢えて感謝さえしてる。背徳的な行為であることを覚悟の上で、15年よりも、映画よりも長く続く彼の人生を、苦しみ、愛することに決める。社長さんがやりたかったことを、オ・テス氏が引き継ぐ。人生は絶望にあふれてる。でも、幸せは生きることにしかない。
すべての人に地獄を与える親切なパク・チャヌクさんだけに、エンディングで、オ・テス氏の正体?ばかり気になるようにしつつ、実はミドちゃんも真実を知っているのでは?お互いに知りながら、お互いに隠しながら、生きていく。
「親切なクムジャさん」
イ・ヨンエは「カル」のシム・ウナを超える殺人鬼となるのかな?タイトルから類推すると、親切にも殺してあげるって感じ?まあ、美女になら殺されても良いって気もしますな。そして、真の復讐劇は自分の身に。美しく生まれてしまったがゆえの地獄ってなんだろ?
楳図先生の作品をパク・チャヌクに映像化させたら、それはそれは恐ろしい作品になりそうな気がする。でも、それが楳図作品の映像化に求められているものだと思うんだよねー。